【DIY】DCブラシレスモータ扇風機の修理【家電】
【状況】
今回はなぜか動かなくなってしまった,DCブラシレスモーターの扇風機が入荷しましたので修理していきたいと思います。扇風機も昨今はいろいろありますね。昔ながらの単純なACモーターの扇風機から羽根がなく輪っか場の枠の隙間から風が吹き出してくるものや今回のようなDCブラシレスモーターを使った静かなタイプの扇風機などいろいろ種類があります。今回、修理する扇風機はDCブラシレスモーターの扇風機です。基本的には電子部品を使ってモーターの制御を行っている扇風機になるわけですが、修理しながら見ていきたいと思います。
【修理開始】
このタイプの扇風機になりますが、具体的な故障症状を再度確認します。
- 風がでない
- 電源が入るが扇風機の羽根が回転しない
という扇風機としての機能がまったく動作しない状況になっています。
【分解します】
ということでまずは、お掃除でもしながら分解していきます。
羽根、羽根ガード、モータ部のカバー脱着。
これは見えてるネジを外していくだけ。
なるほど、首振り機能と風を送るモーターは別になっています。
本体から主モーターにつながる配線は、3本。電源と制御用。
さて、主モーターです。この状態で電源を入れて注意しながら動作させてみます。
【お約束】
==注意と免責==
もちろん、DIY修理ですから途上で動作確認や回路チェックを行なったりする必要がありますので都度、コンセントを差して電源を入れて動かしたするわけですが、羽根のカバーを外していたり回路の配線が向きだしになっていますので修理の際はくれぐれも怪我や感電にご注意ください。
どうやら電源を入れてもモーターがロックしたまま動きません。
手で軽く補助するとクルッと何周かするときもありますが、駆動抵抗があり重いです。
電源を切って回してもベアリングがひっかかるような重さもあるような感じでした。
どうやら、故障の原因はこのあたりかもしれません。念の為、電源周りを確認していきます。
扇風機の下部のカバーを脱着。
これは見えてるネジを外したあとは、樹脂カバーの爪をはずします。
スイッチング電源が見えてきました。
羽根モーターへの電圧は、DC24Vで制御線を入れて3本です。これは正常でボタンを押して風量切り替えなども正常でしたのでマイコンは正常の様子。
ということで観察した結果、ブラシレスモーターちゃんの故障の可能性大なのでモーターを重点的に見ていきたい思います。
外した扇風機の羽根のDCブラシレスモーターです。
ブラシレスとはモーターの電極のブラシという機械的な接触端子がないモーターになります。
この状態で回してもひっかかりを感じるのでまずは、ベアリングを交換していきたいと思います。怪しいところを交換していく作戦です。
基板を割らないように、軸を打撃してベアリングを少し浮かせてみます。
万力などで固定しながら、軸をひたすらまっすぐトンカチで打撃。
ベアリング小が外れてきました。なぜ、小なのかといえばもう1個あるんです。
はい、外れました。2個目のベアリングはこの真ん中に入ってました。2個使って羽根がグラグラしないようになっています。
モーターのコイルが見えます。ブラシレスモーターなので、電子回路でこのコイルの通電位置を次次に移動させて回転を行います。
どうやら、コイルは3極で永久磁石は2極のようです。
あっという間に、新品ベアリングが届いたので交換します。
モノタロウで他の買い物とついでに科ってW688ZZと608ZZを買いました。内径8mmです。
新品と外したベアリングを確認してみましたが、手でクルクル回しても旧ベアリングが特に異常がないように感じましたが、回転物はどっかに傷が入っていたりするだけで調子が変わりますのでなんとも言えず。でも新品はかなり滑らかでNTN製ベアリングなので確かなものです。
永久磁石はカバーの中に入ってます。
さて、ベアリングを組み込んでいきますが、シャフト軸の奥まで入れてやるには硬いので治具(ジグ)が必要になります。近所のホムセンで9ミリのステンレスパイプを買ってきました。
軽く叩いたり
パイプを使って奥までちょっとづつ叩いて入れていきます。
動作確認です。
この状態でモーターのコネクタを接続して動かしてみると、、ブ、ブ、ブっと言った動作で全然治ってません。
ブ、ブは音でなくて動き方のイメージです。
次の壁にブチあたりました。
さて、ここで少し、日を置いてこのDCブラシレスモーターについて仕組みから考えてみることにしました。
まず、この扇風機のDCブラシモーターは、アウターローター型で金属ケースに収納された永久磁石が外側にあり、これがアウターローターになり回転体となります。コイルと基板は固定されているので回りません。アウターローターの中心に心棒がついていてベアリングに支持されて回転力を取り出します。電子回路によりコイルの電流が制御されて極性が次々に制御されていくのでアウターローターの永久磁石がひっぱられて高速で回転します。
簡単な回路の模式図を示します。
図1とします。
u,v,wは各コイルになり、S1,S2,S3はスイッチになります。
スイッチは主にMOSFETのようなスイッチ半導体素子がつかわれて高速でONOFFを切り替えてブラシレスになっています。
これを元に、コイルの断線の有無や基板の異常などをルーペを使ったり(半田割れや焼けている箇所やなにか外れてりしていないかをチェック)しながら調べるも異常なし。
そして、何度か、通電して軸を手で回しながら試行していると時々、軽く回ってそのあとに動かなくなり、コイルの通電が切れます。
おそらく、基板の制御マイコンが異常を感知してコイルへの通電をカットするのでしょう。ということは、マイコンは生きています。
回路をもう一度、確認します。
あースイッチのMOSFETが1カ所死んでるかなとボンヤリ気が付きました。2カ所死んでたら絶対回転自体するわけがないし、1カ所なら惰力(手で補助)がついていれば何回転かは回る可能性はあります。これはエンジンで1気筒死んでるねとかと同じ原理です。
とすると、基板についているトランジスタかMOSFETを調べて交換してあげれば、このモーターは復活する可能性がありますね。
コイルへのパターンを見るとこの子が最初にコイルに繋がってるのでこの子が今回の主役のMOSFETで間違いなさそうです。
これは、3個の内、一つの印刷からMOSFETのAO4840Eであることが判明。
デュアルチャンネルの8ピンMOSFETでこれ1個でS1に相当するスイッチを担当することが出来ます。
仕様を確認すると、40V 6AのデュアルNチャンネル 8ピンです。
モノタロウで買い物があったのでついで検索すると、40V 7あのデュアルチャンネルMOSFETが20個1000円程度でしたので購入。
交換します。元の表面実装の部品の足に半田を片側づつ全部に盛り付けて一気に4本溶かします。
溶けたら、ソルダーアシストで片側面を浮かせて交互にやれば外れます。
となりにくっついた半田や汚くなった半田は、新たに半田を盛り付けて溶かしてくっつけて吸い取り器で取るとキレイに吸引出来ます。
外したら新しいMOSFETを乗せて半田づけします。
出来上がったら試運転です。
が、どうやら動きません。新たな壁の登場です。
今やった仕事を確認しつつ再度、動かない原因を考察します。
数日、放置して考えました。うん、半田付けは完璧だし失敗もないはずだという焦りの気持ちを静めるためです。
回路図を眺めて、スイッチまで交換しました。
でもスイッチは何がコントロールしているんだろう。そりゃ、マイコンだよ。じゃあマイコンは、どうやって回転している磁石のN極とS極を知ってコイルのスイッチをONOFFしているの?回転位置がわからなきゃスイッチの切替ようがありません。どうやら、この辺りの仕組みが正常かの確認が必要です。
答えは、上の写真にばっちり写っていました。賢明な読者さんは気付いていることでしょう。
そう、回転位置を検出するホール素子が基板にはついていました。もちろん、そのことは知っていたんですが、磁石から離れすぎていたら検知出来ないんです。
そこで新たな視点で確認してみると、
この赤丸の幅が広すぎて、基板についているホール素子(磁石のNとSを検知する)がちゃんと動いてなかったようです。
でトンカチでカンカンして隙間を調整すると、あら、回っちゃった(^o^)
考察が正しかったようです。
DCブラシレスモーターのMOSFET交換成功です。動画もどうぞ。
ベアリング交換時に軸を叩いたときに、ネジ山が少し傷んで羽根の固定スクリューが奥までねじ込めなくなったのでネジ山修正します。
左ネジ 8ミリ 1.25ミリ ダイスで修正。
元通りに組み立てていきます。
モーター部のカバーをはめ込みます。
羽根のネジ山も切り直したのでばっちり。
最終的な動作チェックを行いました。バッチリみたいです(^o^)
修理成功です。
DCブラシレスモーターは動作が静かで低速が得意ですね。