【DIY】スイッチング電源の修理【ACDC】

【DIY】スイッチング電源の修理【AC100V-DC12-2A】

【状況】

現代人に欠かせないエレクトロニクスな生活を営む上でかかせないスイッチング電源です。今回は、小電力なスイッチング電源で50W程度のACアダプタなどにも使われるタイプの回路を搭載する中華なACDCスイッチング電源を修理しました。シンプルではありますがそれなりにまっとうな直流DCが出てくるカワイイ電源です。WEBマスターのお家では、主に人感センサー式の補助照明用のLEDテープライトの12V電源として使っていました。ものすごく安く入手出来て便利だったのですが、イマイチ調子が良くない。ついには、LEDテープが点灯しなくなることが多くなったので【要修理】となりました。買い換えるのはカンタンなんですが、この機会にスイッチング電源の仕組みのおさらいと修理のポイントを確認にしときましょうということで今回はスイッチング電源の修理をご紹介します。

【今回修理するスイッチング電源について】

AC100-DC12-2A のACDCスイッチング電源です。

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※内部回路は当記事の内容とは変更される可能性があります。

送料込みの500円程度で買えてしまう中華電源です。

内部の基板は、400V耐圧33μF 16V耐圧1000μF×2 600V8Aパワートランジスタ 大電流ダイオード コイル トランス TL431 フォトカプラ 抵抗などで最小部品で構成。

回路は、RCC式フライバックコンバーターで要は、発振が自励式で発振周波数が負荷により変化します。
出力電圧の情報が常にフィードバックされてトランジスタを発振させています。

【修理開始】

■故障症状:

電源ON時に、正常な電圧が出ない。が、ONOFFを繰り返し行うと、正常動作するタイミングがあり、その時の電圧は正常だが、電圧が不安定になったりする。

■修理レベル1(外観などのチェック)

まずは、部品の外観チェックや半田付けの状態確認をします。
今回はケーブルがないですが、ACアダプターなどでは、単に根元の配線が切れていただけということもあります。今回のような基板の場合は、ヒューズが飛んでいないか、半田にクラック(ヒビ割れ)がないか、部品がこげたような状態になっていないかなどを目で確認します。

すると、ヒューズは正常でしたが、

なんと!トランジスターの足下に半田付けのクラックを発見。ただし、基板もトランジスタも通常の状態でケースにネジ留めされているのでグラグラするような状態ではないので接触状況によっては正常に動作していた。これを半田付けをやりなおしても、症状は再発した。

■結果NG

まぁ、分解過程でクラックが入ってしまったということも考えられなくはないしね。ということで次へ。

■修理レベル2(劣化しやすい部品を交換)

電子回路の修理なので故障を箇所を発見して部品を交換したりして修理する事になりますが、外観には異常がない場合もあるのでこの部品だー!と判別するのはなかな困難です。

とは言ったものの壊れやすい部品というものはあるのでその辺りに当たりを付けてみて試しに交換してみます。WEBマスターも過去には、パソコン用電源の電解コンデンサーやマザーボードの電解コンデンサが膨らんだり、中の電解液が滲みでて乾燥した状態のモノを何度か交換した結果、無事に復活したという事がありました。

※モリモリっと発射しそうに膨らんだ電解コンデンサ(パソコンのグラフィックボード)

写真のコンデンサのように見ただけでわかると簡単なんのですが、やっかいな事にただただ内部の電解液が蒸発減少してしまう場合もあるので外観は異常がなくてもESR(交流から見た抵抗値)が大幅に上がってしまっている場合もあります。
このような場合には、回路の定数が変化してしまうので動作不良の原因になります。ですから、本数が少ない今回のような修理は、手っ取り早く交換してしまうのも一手ですね。

ということで、

■まずは、2次側電解コンデンサーを交換。

なぜ2次側からといえば在庫があったから。日本ケミコンのKMG 16V1000μF 2本

■結果NG

改善なし

まだまだ、、

■次は、1次側電解コンデンサを交換。

1次側は、400V33μF 耐圧が大きいので在庫がなかったので取り寄せました。

こちらは、85℃タイプですが、定格の半分程度しか使わないので問題なしですが、大きさが違うのが問題ですが、無事解決。

ニチコンの400V 33μF 85℃

このスイッチング電源は、220Vの入力も想定して設計しているので日本で使うなら耐圧はもう少し低くても大丈夫です。

■結果NG

改善なし。

んー原因は電解コンデンサではなかったようです。

■修理レベル3(主要部品のチェック)

電解コンデンサは確認しましたが、まだまだ、パワートランジスタやダイオードや抵抗が使われているのでテスターで確認できる範囲でチェックします。基板に乗ったままだと他の部品の影響を受けるので考慮しながらチェックしました。パワトラは大きい部品なので外して確認しました。

 

トランジスターは、2個ありますがデカイのが写真の赤丸のパワートランジスターで13007B NPN  700V 8Aという現代のパワトラです。

 

NPNトランジスターなので、テスターを導通モードにしてB-C間 B-E間が通ればOK C-E間は不通でOKです。

ダイオードは、ダイオードモードでA-Kの方向にのみ約0.6Vで電流が流れればOK。

今回は、どちらも正常。

■結果は主要部品異常なし

■修理レベル4(回路を解析し計測したりしながら原因を突き止めます。)

なかなか、手こずらせてくれるじゃないか(゜Д゜)

スイッチング電源回路では交流を直流に変換し高周波トランスとトランジスタを使ってスイッチング動作を高速で行っていてこれをスイッチング周波数といいこの回路では、ICを使わずに自己発振を行っています。この動作を目で見るようにするためには、テスターでは不可能なので『オシロスコープ』が必要です。

 

■とうことで、新たにオシロスコープを投入します。

アマゾンで売ってる1番お値打ちなオシロスコープを買いました。なんと、3000円代(゜Д゜)
あとは、電圧の倍率変換ができるプローブは必須です。両方でも5000円未満(゜Д゜)です。

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観測できる周波数が、200KHzなのですがこれは、ノイズまで観測するには少々足りませんが、今回の回路のスイッチング周波数を確認するにはギリギリOKでした。

■観測開始

まずは、整流ダイオードに入る直前の観測波形です。

 

 

ここは、AC電源の波形がそのまま出て来ます。プローブは1/10です。
ピークが約141V 実効値100V
この部分に触るとビリっとくるってことです。

■整流ダイオードを観測

次は、整流ダイオードを通して観測します。

1個なので半波整流の波形が現れました。反対側はどうなってるでしょうか

逆向きの波形が現れました。そうなんです。ダイオードでの整流というのは、交流の正負どちらかの時だけ電流が流れます。

つまりダイオードは正常ということが観測できました。

次は、電解コンデンサーを通して確認。

上の半波整流を2個足すと全波整流になり、電解コンデンサを通過すると、交流の正弦波は、直流らしい波形になりました。ただし、電圧は、約140V近いです。交流波形のピーク電圧に近い電圧になっています。

ちなみに、電解コンデンサの両方の足下の電圧波形は、

三角波になっています。

次は、パワートランジスタを観測します。

コレクタ電圧を確認しても、おっと、ここで確認できるハズのスイッチング波形が現れません。
20msに1回程度、ピクピクしている波形は交流電源に由来している波形のようです。

つまり、自己発振せずスイッチング電源なのにスイッチングしないので2次側に正常なDC12V電圧が出力されないようです。ただし、パワートランジスタの測定では、高い確率で正常でした。

時々、正常になる時があるので各素子の破損はやはり考え難いです。

ここで発見が!

とりあえず、トランジスタ周りを計測しているときです。パワートランジスタのベースにプローブで触った時につなげたいたLEDテープが光りました。この時、動作が正常になったのです。

こ、コイツ!動くぞ!

■運良く、正常時のスイッチング波形を観測できました。

正常時のスイッチング波形は、数Wの負荷で約17kHzでした。

ということで、起動時に、パワートランジスタのベース電流が足りないという可能性が出て来ました。
基板上の回路と各素子を回路図に書いて確認して、ネットで出回っている基本的なRCC式フライバックコンバーター比較した結果、起動抵抗が省略されている回路になっていることに気がつきました。

■故障原因の考察

確かにこのスイッチング電源、あれおかしいな点灯しないなってことでスイッチをパチパチやってことが最初の頃よりあったような気がしてきました。回路の各定数も温度や経年劣化により設計時により変化しますので確実な動作をさせるためには、それらを考慮して設計する必要があると思いますが、この回路は、後に説明するメカニズム編で言うトランスの2次側電流による3次巻線の帰還電流のみ頼っている設計だったので、起動時にベース電流が元々少ないので温度変化や各定数の劣化によっては、起動しなくなる症状に至ったんではないかと考えました。つまりは、回路設計から来る構造的な問題で何かが壊れたわけではないってことです。スイッチング電源の自励式ですから、そもそも発振しなければ動きません。

■修理方法

実験的に、基本的な回路を元にして起動用の抵抗を後付けして回路の動作状況や発熱を確認します。
問題がなければ、採用します。

入れる抵抗は、420KΩにしました。
グランドー整流後最大値が約130Vなのでそこから直接420KΩパワートランジスタのベースにつないでおよそ約0.3mAを流してみることにしました。パワートランジスタのベースに与える電流としては、とても小さな電流なので始動時以外の影響は低いでしょう。元の帰還電流+起動電流でというこです。

結果は、GOOD。

スイッチのONとOFFを何回繰り返しても一発で起動するようになりました。

少しはやるようになったな!

2次側に、DC12V確認。LEDテープも問題なく点灯。

■回路に、起動抵抗追加を採用しました。

 

420KΩの抵抗がなかったので200KΩと220KΩで合計420kΩで接続します。

起動用の抵抗は、電源に並列に繋がることになるので常に電流が流れますが約40mW程度になります。

■スイッチング周波数について

オシロでスイッチング周波数を観測してみました。

10μSで約200kHzの周波数になっています。リップルノイズとスパイクノイズがわかりにくいんですが見えてきました。このオシロスコープではこの辺りが見える限界になります。

■2次側のトランスの両端子

スイッチングによってトランスから電力が送り込まれてきますが、整流前なのでONOFFのスイッチングしてるなって波形がでています。これをダイオードによって整流してコンデンサで平滑してLCのフィルターを通って出力になります。

■動作確認後、組み立てます。

筐体がアルミなので放熱板代わりにダイオードとパワートランジスタを固定してます。

小さくてカワイイ電源です。

修理後、しばらく使っていますが異常もなく正常稼働中しています。

★LEDテープ

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★抵抗など部品セット

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■修理完了!

 

以下、執筆中!2018/11

■スイッチング電源の動作メカニズム(回路図を起こしたので解説していきます。)

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